これまでのTwiceといえば、一連のシングル曲に顕著な、ノリ優先のガチャガチャした曲=キャッチーな女子ネタのサビ(ユニゾン合唱)+周到なキラキラアレンジの曲という印象しかなかった。
 

良くも悪くも、ティーン女子をピンポイントで狙う、職人作家の腕に頼った作品。表現の精妙さではなく、市場的堅牢さを追うプロダクツーー早い話が日本のアイドルの作と何ら変わらない、オーバープロデュースの工業製品ーーばかりだったように思う。「TT」にしても「Knock Knock」にしても、よく作り込まれているが、どのメンバーの歌唱かなど、正直まったく頭に残っていない。
 

だが、今回のファーストアルバムでは、そんなコッテコテな押し付けがましい曲は影を潜め(“活動曲”の1曲目は致し方ないとして)、極めてナチュラルで肩の力を抜いた、メロディのいい佳曲が並んだ。おかげでメンバー各人の自然な歌いっぷりが前に出て、“毎日聞いても耳が疲れない”じっくり聴き込めるオーガニック作になっている。普段は、PVで見かけても、脳内で音を絞ってツゥイの美貌しか追わない僕のようなクソリスナーでも、改めて個々のメンバーの歌声に耳を傾けてしまう、きわめて丁寧な作りになっていると思う。(逆に、従来の主要客であった十代少女たちには、地味で味薄な作品に映るかもしれない。)
 

子供の飴玉を横取りするようなオッサンになるまいよと、Twiceは可能な限りノータッチで来たのだが、これにはヤラれた。
素直にいいアルバムではないかと思う。
 

ファーストフルアルバムともなれば、既存路線に沿って、全曲シングル・カット可能な、ゴージャスで人工着色料ベタベタのカラフルな作品集も作れたはずーーむしろ市場的にはそちらを望まれていたのではないかとも思う。そこであえてこの絶妙のチェンジアップを投げてくるあたり、所属事務所JYPのセンスの良さを感じる。
 

実際、メンバー個々の地肩の良さがぐっと前面に押し出された(まだ数回しか聞いていないが、ジヒョ、ジョンヨン辺りの伸び伸びした歌いっぷりは、非常に印象に強い。)本作を世に問うことで、Twiceはブームの消費材では終わらないぞという姿勢を示したと思う。やはり目利きの社長・Mr.餅ゴリが、手塩にかけて選り抜いたメンバーだけに、ホントに大事にされてるなあ。(本作発表のお陰でグループの寿命が確実に伸びたと思う。)
 

GG第四世代で双璧とみられていたGFriendsや、手作り良作路線でジワジワ背中を脅かしていたはずのPRISTINが失速気味の今、Twiceはまた後続を引き離してしまったかもしれない。(本来なら、PRISTINこそがこういうアルバムを作って、Twiceの牙城を切り崩すべきなのだが……。)
 

そう。要するに、PRISTINペンの私は、このアルバムを聞いて無茶苦茶歯噛みしているのである。